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事務所通信

令和8年7月
自己資本比率の推移は「自社の成長記録」です
 
 
せっかく利益を出して資金を蓄えても納税で減ってしまう――そんな社長の不安な気持ちに答えてくれる指標の1つが、自己資本比率の推移です。 自己資本比率が右肩上がりで推移していることは、安定した黒字経営を続け、きちんと納税して利益を積み重ね、経営基盤を着実に強化してきた証、いわば「自社の成長記録」です。一方、赤字経営が続けば、自己資本比率は低下傾向となり、経営基盤の弱体化を招いてしまいます。 大切なのは、一時の上下に一喜一憂することなく、自己資本比率の推移を長い目で見ながら、着実に積み上げていくことです。納税ができてこそ自己資本が増えていきます。自己資本比率が高まるということは、新たな取り組みをしたいときや想定外の環境変化があったときでも、資金繰りを気にせずに必要な打ち手を選べる、つまり「経営の自由度」が高まるということでもあります。

会社の将来を考えるヒント! 自社株評価、していますか?
   
  日々の経営において、売上や利益、費用、現預金の残高や自己資本の状況など、損益計算書・貸借対照表上の数字に目配りしてきた社長さんは多いことでしょう。その結果、事業が順調に成長し、利益が内部留保として蓄積されていくことは、まさに「理想的な会社の姿」といえます。 一方で、「理想的な会社の姿」は、税務の視点からすると注意すべき側面もあります。それが「自社株の評価額の上昇」です。中小企業(非上場会社)の株式(自社株)は、国税庁が定める一定のルール(財産評価基本通達)に基づいて評価額が決まります。社長がイメージしている株価と税務上の評価額とが大きくかけ離れてしまっている――ということも珍しくありません。 自社株の評価額を把握しないままでいると、次のようなリスクが考えられます。
 ○相続発生時、相続税の負担が想定以上に重くなる可能性がある
 ○安価もしくは無償で後継者に自社株を譲渡した場合、「贈与」と判定される可能性がある
 一般に、中小企業の株式は市場で売買されることがないため、現在の評価額がいくらになっているのか把握しにくいもの。そのため、意識的かつ定期的に株価の算定を行い、自社株の評価額を「見える化」することが重要です。年に1回、決算終了後に自社株評価の算定を行うことをお勧めします。自社株評価の算定は、これまでの経営と、これからの経営のあり方そのものを見直すきっかけにもなります。顧問税理士へご相談ください。


いざというときのために 知っておきたい! 資金繰り支援策
   
  中東情勢の混乱により、燃料や原料の輸送が滞り、価格も高騰しています。今後、自社でも「製品の原材料が突然、大幅に値上がりした」「商品の入荷が大幅に遅れ、販売できない」――といった事態が起こる可能性もあります。 売上・利益の確保が難しくなると心配になるのが資金繰り。国や政府系金融機関等では、事業者の資金繰りを支援する資金貸付や信用保証の制度を設けています。こまめに確認しておきましょう。 ただし、手元資金の確保は重要な一方で、必要以上に借入れに頼ると返済額が増えて、将来の経営に影響を及ぼしかねません。借入情報を「借入金台帳」「借入金一覧表」などにまとめると、返済年月ごとの元金・利息の支払いに必要な金額が明確になります。 今ある手元資金で何か月分の固定費が賄えるかを把握するとともに、どこからどれくらい借入れができるかを確認しておけば、いざというときにもすぐに借入れを決断できます。
     

令和8年6月
「飲食料品に消費税をかけない」とは?
 0%か、非課税か――どうなる? 消費税の取り扱い
 
 
長引く物価高を背景とした、「飲食料品に消費税をかけない」政府の方針が注目を集めています。実は、どのような取り扱いになるかによって事業者が納める消費税額が変わることは、意外と知られていません。現段階の議論においては、取引区分を「税率0%(課税取引)」とするか、「非課税取引」とするか――が大きな焦点となっています。飲食料品のみを販売する事業者を例に、その違いをおさえておきましょう。
○「税率0%(課税取引)」の場合:売上に係る消費税は0となりますが、飲食料品以外の仕入(備品や包装材等)に係る消費税は差し引くこと(仕入税額控除)ができます。そのため、消費税確定申告によって仕入に係る消費税(支払った消費税)が還付されます(本則課税による申告の場合)。
○「非課税取引」の場合:売上に係る消費税は0となりますが、飲食料品以外の仕入(備品や包装材等)に係る消費税を差し引くこと(仕入税額控除)ができません(本則課税による申告の場合)。そのため、仕入時に支払った消費税額の全額がコストに含まれ、コストアップは避けられず、事業者によっては利益が減ってしまいます。値上げ等の検討も必要になるでしょう。

金利上昇時代の金融機関との上手な付き合い方
   
  日本の金利は超低金利の時代を終え、緩やかな上昇局面に入っています。不安定な経済環境とも相まって、いつ、新たな資金調達が必要となるか分かりません。いざというときに備えて、金利動向とともに、金融機関との向き合い方を再確認しておきましょう。そのポイントとして、①毎月の経営状況を「数字」で把握する②経営状況の異変へ適切に対応する③会社の状況を金融機関に伝えておく――の3つが挙げられます。  
 近年、多くの金融機関では、融資の際に事業評価を重視する動きが見られます。融資先企業の経営状況をこれまで以上に重視する機運はますます高まるでしょう。企業側も、毎月、自社の数字を確認し、状況を整理して伝えること――つまり月次決算を行い、経営の透明性を高めていくことが、金融機関と上手に付き合う基本になります。月次決算に基づく業績を金融機関と適時に共有し、原因分析や改善に取り組んでいる企業は、継続的な支援や助言を受けやすくなります。  
 なお、月次決算には、「適時・正確な会計帳簿が作成されていること」「会計事務所による毎月の巡回監査を受けていること」が大前提となります。


めざせ、賃上げ! 
「価格交渉力」を身につけて適正利益を確保しよう

   
  不安定な世界情勢を背景に、急速に資源高が進んでいます。原材料費や運送コスト等の増加も懸念されるなか、労務費の上昇も大きな経営課題。適正利益の確保がカギとなるいまこそ、「価格交渉力」を身につけることが肝要です。  取引はあくまで「対等な立場」で行うもの。この前提を踏まえ、取引先との価格交渉に臨む際の5つのポイントを確認しましょう。
(1)自社業種・業界の価格改定に関する情報を収集する
(2)価格交渉を行うタイミング・順番を検討する
(3)取引先に対して価格交渉の申し入れを行う
(4)交渉のベースとなる説明資料を準備する
(5)発注後に発生する価格交渉への対応を想定・準備しておく
 価格交渉は企業の成長を支える重要な経営活動です。適正利益の確保が、持続的な成長と賃上げのベースとなります。社長はもちろん、従業員の1人ひとりが価格交渉力を身につけ、会社全体で、毅然とした姿勢で対応することが最も重要なポイントです。
     

令和8年5月
令和8年度税制改正のポイント③ 食事支給に係る所得税非課税限度額の見直し
 
 
企業が従業員等へ食事を支給したとき、原則は現物給与として課税されます。ただし、①従業員等が食事価額の50%以上を負担していること②企業負担額(=食事価額-従業員等が負担している金額)が月額3,500円以下(消費税額を除く)であること――をいずれも満たしていれば、従業員等の給与として課税されません。 長引く物価高をふまえ、令和8年度税制改正により、食事支給に係る所得税非課税限度額(=企業負担額の上限)が「月額3,500円以下」から「月額7,500円以下」に引き上げられます(所得税基本通達の改正をふまえ、令和8年4月1日以後に支給する食事について適用予定)。
食事支給は、定期昇給やベースアップに続く「第3の賃上げ」ともいわれます。改正のポイントをおさえ、自社の福利厚生の充実に役立てましょう。

モヤモヤ解消! 領収書にまつわる素朴なギモン
   
  新年度となり、新入社員を迎えた企業も多いことでしょう。このタイミングであらためて確認しておきたいのが、「領収書」にまつわる基本的なルールです。
〇領収書はあくまで「支払いがあった事実」を証明する書類です。経費として認められるかどうかについては、「事業に関係があること」「誰と、何の目的で支出したか」等によります。領収書には、支出目的や人数等を追記する習慣をつけましょう。
〇領収書が発行されない場合は、「支払証明書」等の書類を作成すると良いでしょう。支払証明書等には「支払日・支払先・金額・内容」を正確に記載します。
〇メール添付のPDF等、原本がデータ(電子)の領収書等を受け取った場合は、電子帳簿保存法により、紙に出力せずデータのまま保存するのが原則です。
〇消費税の計算(仕入税額控除)に必要な項目が記載された書類のことをインボイス(適格請求書)といいます。原則として、領収書に①インボイス発行事業者登録番号②適用税率(8%・10%)③税率ごとに区分した消費税額等――が追記されていればインボイスに該当します。「インボイスに該当しない領収書」の場合、会社が支払う消費税が多くなります。
〇公私混同や不正利用を防ぐためにも、領収書に関する社内ルールの整備は必要です。例えば、「1万円以上の支払いは事前に上司による承認が必要」「領収書の精算は〇日以内」などと、金額や精算日に基準を定めると良いでしょう。


あらためてチェックしてみよう!「給与明細」のきほん
   
  〇時間外手当:勤務状況(日数・時間)を把握した上で、以下の算式で計算します。  
時間外手当=(基準内賃金合計÷所定労働時間)×割増率×時間外労働時間  
 〇非課税通勤手当:税法上、通勤手段ごとに定められた非課税限度額の範囲内の支給をいい、公共交通機関の場合は、定期代等の実費が相当します。マイカー通勤の場合は、通勤距離に応じて金額が定められています。  
 〇社会保険料:社会保険料のうち、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は、毎月の報酬(基本給や通勤手当、時間外手当等を含むすべての支給額/税引き前)を基に算出されます。  
 〇所得給与には、毎月一定額が支給される基本給や通勤手当などのほか、時間外手当のように毎月変動するものがあります。これらを基礎として、控除する社会保険料や税金の額が決まります。
税:課税支給額から社会保険料を控除した「課税対象額」に対して、源泉徴収税額表(月額表)を参照し、扶養家族の人数に応じて源泉徴収すべき所得税額が決まります。  
 〇住民税:前年の所得をもとに税額が決まります(社員の住所地の市区町村が賦課)。